「もしかして、大海くんのお母さんですか」。3人のお子さんを連れて何度かご来店いただいていたママさんは、次男の同級生でした。「どことなく似てるから」気づいたらしい。赤ちゃんを小上がりにお座りさせて、他愛のない話題に花を咲かせる。駄菓子屋冥利につきるひと時だ。
この日は、パパも一緒にご来店。予算は1人350円らしい。駄菓子屋だから、なかなか買い応えがあるよ。パパの大判振る舞いだ。
はい、お会計。小学1年生の長男くんは280円。残った70円で2回目の買い物を始めた。次男くんは保育園の年長さん。見事に予算ぴったりのお買い物だった。
ありがとうございました。「……」。どうやら、お釣りがないことに納得できないらしい。
小上がりに座って駄菓子をもぐもぐしながら、長男くんがこう言った。「ぼくさあ、3年生か4年生になったら、友だちと来てみたい」。いつでもおいで。おばちゃんは楽しみに待ってるよ。
駄菓子屋の日々はこんな風に、何でもない小さな小さな出来事の繰り返しだ。この空間を行ったり来たりする言葉は、ぼやぼやしていると逃げてしまう。仕草や表情は、ちょっと目を離すと宙に消えてしまう。けれど、捉えよう、覚えておこうとは思わない。現われては消えるのを、なあなあとただ眺めている。
ああ、今日も楽しかった。シャッターを下ろして戸締りする時、いつもこう思う。それがすべてだ。


